企業ではコスト削減は大きな課題であり、日々取り組んでいることでしょう。経費を削減したり、無駄がないかをチェックしたりします。ただ何がコストであるか明確な基準はなく、またコストは数値として見えにくいのが現状です。そこでコスト削減を行うなら、コストの見える化から始めるべきです。
見える化とは
コストの見える化とは、つまりはコストを数値として見えるようにして把握し、改善を行っていくということになります。難しい言葉を使うとKPI設定(数値計画と目標管理)を設定して、モニタリングして評価していくということになります。
経費削減のためにタクシーを使うなと、号令が出たとしましょう。残念ながらこれを社員全員が厳守するのは難しいことです。地方出張などでタクシー以外の交通手段がないところだと、誰か社員が使うことも出てきます。そうするとあの人も使ったのだから私も、ということになります。これは間違った見える化の対策といえます。
たとえばコピー機のコスト削減を検討したとします。方法としては、コピーしない、コピー枚数を減らす、コピーを上手く使い節約する、などが考えられます。コピーしないというのには限度があり無理でしょう。枚数を減らすというのもこれも業務でコピー機を使えば限度があります。
そこでコピー機の上手い使い方をするという方法を考えてみましょう。まずはコピー機の配置と枚数や単価のカウンター料、コピー種別の情報収集を行い、見える化をします。それにより一枚あたりのカウンター料や、使用量に社員ごとでばらつきがあることがわかりました。そこでコピー機の配置の見直しと、誰がどの機種を使うかというルール作りをしたのです。
コストの「見える化」をするメリット
コストを見える化すると、コストが数値や情報として見えるようになり、どのようにコスト削減を行っていくか対策を立てやすくなります。しかも効果的な対策を立てることが出来ます。また社員にとっても良い効果は生まれます。
- 会社全体でのムダなコストが明らかになる
- 社員がコスト削減の必要性を実感できる
- 会社が一丸となってコスト削減に取り組める
- 削減のアイディアが生まれやすくなる
このようなメリットがあります。ただ見える化してコスト削減を行うには、社員を圧迫するような削減はしてはならず、それは間違ったコスト削減になります。正しいコストの見える化で削減を行うと、上記のように社員にも良い影響が生まれるのです。
コストの「見える化」をする方法
コストの見える化は、部門ごとと業務ごとの2つで行います。
まず削減できるコストを把握するためにも、会社全体でのコストの内訳を知ることは重要です。部門ごとにかかっているコストを並べて検討することで、社内のムダが明らかになります。さらに、ひとつひとつの業務や作業ごとにもコストの見える化をしていきます。そうすることで各業務の生産性を知ることができます。また社員が自分の業務を振り返るきっかけにもなり、改善案も見つかりやすいでしょう。
ABC
コストの中でも見えにくいのが間接コストであり、給与や開発費用など間接的に発生するコストのことを言います。そうした特に見えにくいコストを、正確に計算するために生まれた手法がABC(Activity Based Costing)です。
ABCは「活動基準原価計算」と訳されるとおり、業務を活動ごとに細かく分類して、コストを算出する手法です。
たとえば会議という業務を活動単位で分類すると以下のようになるでしょう。
- テーマの企画
- 場所、日時の設定
- 参加者の調整
- 会議の進行
- 資料の作成、配布
- 議事録の作成、配布
それぞれの活動にたいする原価を細かく算出していくと会議のコストが明らかになります。では、具体的にどのようなコストがかかっているでしょうか。参加者の人件費だけではありません。会議の準備にかかった費用(資料の印刷代、オフィスの電気代、労力)なども考えて、活動原価を算出する必要があります。
なお、在庫整理などで使用される「ABC分析」という手法は混同されがちですが、ここで紹介するABCとは別物です。
見える化を進める上でのポイント
コストの見える化を行っていく上では、数値化するというのが重要になりますが、何もすべての指標を数値化する必要はなく、コントロール可能な指標を数値化すると良いです。そして当然コスト削減を目指すので、見えるコストと共に見えないコストを算出していかなければなりません。また比較対象を用いて比較することも重要であり、比較しないとコストがかかっているか、かかっていないのかもわかりません。
見えないコストには間接的に発生するコストの他に、時間も同時にコストになりますので、これも考えて見える化をする必要があります。どうしてもトップダウン方式の経費削減活動では、全体的なコスト削減意識が持てず、見えないコストも把握できないので、行ってもあまり効果が現れないということになります。
コストの見える化の方法をご紹介しました。ポイントは具体的な数値をもとにコスト削減に取り組むこと。また、通常は見えないコストの存在を意識して算出することも重要です。